むきりょくかん。Y.E.T. th Cops and robbers 山手線全域ドロケイツアー Report
1.集合&前半戦    2.後半戦&打ち上げ
 間幕
 
 

  生き残るんだどんな手段を使っても                             .

 再び上野公園。少しずつ各チームが集まっていく。

 「2時間半延々と歩いて逃げ続けた&追い続けた」という強烈な2チーム(てぷこ・仁義)を待ちつつ、
 前半戦のあーだーこーだに話が咲いている。

 そうなのだ。基本的に個人プレーなので、その時に話す相手がいないから、話したくて仕方がないのだ。

  
 そして開始時間が近づく。今度は我々が泥棒だ。

 作戦会議。

 正直な所、泥棒側は組織だって動く必要はなく、「全員がまばらに散らばって逃げる」が間違いなく最善策。

 なのに、皆で話してる間に、とんでもなくどうしょもない作戦を思いついてしまった。

 戦略的に考えれば、何の意味も無いどころか、むしろ自分を追い詰めるような作戦。
 それゆえのとんでもない馬鹿馬鹿しさが、笑いの止まらない我々を突き動かしてしまっていた。

 笑いが止まらない。とにかく、皆が揃って、「やべぇ、この作戦は馬鹿だwww面白いwww」という状態。

 これでこそ吉村チームと言えるかもしれない。
 対してチームTは真面目に策を練っているが、恐らく30分後には霧散するだろう。
 それくらい、どーしょもない作戦だからである。

 時間が近づき、グラサン舞台が上野駅に移動する。
 この光景、物凄くシュール。

     

 後半戦A 泥棒  上野駅〜巣鴨駅 - 矢 陣 -
  

 

  アローっていったい何ですか?                           .

 開始後、15分たつとこのような散らばり具合となった。

 吉村は北へ、高町ぐずりんは南へ。そしてそれ以外の全チームが総武線へ。

 グラサン集団である彼らは電車の一両をほぼ占拠し、既に乗っていた人々から恐れられていたらしい。
 女子高生から「なんかこの列車怖い」だの、「逃走中でもやってるの?」とか言われたとか。

 そう。我々の作戦は非常に頭の悪い作戦。

 「吉村・高町の二名を囮とし、他全員を新宿に移動させる」

 というもの。

 戦略アドバンテージは一切無い。
 むしろ、泥棒が固まる事で一挙に検挙される危険をはらんでいる。

 それでも、この布陣は面白いと思ってしまった。馬鹿馬鹿しいと思ってしまった。
 故にこの布陣は完成する。

 

 見よ!!
 これが我らが即興奥義、アローフォーメーション!!!

  (戦略的効果は無い)


 決まった。決まりすぎた。

  

 そして数分後、警察移動開始。

 山手線の上下、総武線の三方包囲。

 こうしてチームYは、開始早々、完全に囲まれた。

  

 後半戦A 泥棒  巣鴨駅 - 巣鴨 -
 

  社長っていったい誰ですか?                          .

 陽動隊の方割れである自分は山手線の北、巣鴨駅に降りた。

 とにかく、駅から離れて警察との時間を稼ぎたいということで、ひたすらに南へ歩き始める。

 既に前半戦で足が疲れているが、警察に追われているのだ、そんな事を言っていられない。


 

 アローフォーメーションが完成したのは六義苑の周囲を歩いて、有料だと知ったあたりだった。

 そして始まる警察の移動。
 勿論、山手線北側にも警察が。3チームが電車で近付いてくる。
 巣鴨に近づくのはあっという間だった。

 こいつはマズイ。更に南に逃げねば! と、更に足を運ぶ。

 

 そして、数分後。何だか小奇麗な寺なぞを眺めていた頃。

 
 マップを見て気付いた。

 警察が全員、巣鴨を通過した。

 ……あれ? 俺、一切追われて無い……?

 

 後半戦B 泥棒  巣鴨駅 - 散歩 -
 

  神はどこまで僕を試す                               .

 「いやまさか、完全スルーって事はあるまい。きっとこれはフェイクだ」

 と思って、更に複雑な住宅街にもぐりこみ、警察の動きを監視する。

 だが、明らかにこっちに来る気配がない。
 新宿の包囲網は徐々に狭まり、泥棒は新宿を起点に散り散りに逃げ始めた。

 くっ、確かに自分は特別ルールで勝利条件にならない事になっているが、まさかホントにスルーされるとは!!

 
 あまりに寂しいので、住宅街の児童公園のシーソーに座ってみた。
 何でそんな事をしたのかは、もはや自分すら憶えていない。

 ああ、空が青い。風が冷たい。そして平和すぎる。誰も来ない。

 遠くの新宿では恐ろしいまでの激戦が繰り広げられているのだが、自分は一人シーソーである。スーツで。
 もはや、ちぃ散歩である。一人アド街っく天国である。

 ……くっ! 放置プレイとはやるじゃないか! ならばこっちにだって考えがあるぞ!!

 と言う訳で、巣鴨駅へ戻り始める。

  
 捕まえる気がないなら、捕まえざるを得ないような動きをしてやろうじゃないか。

 向かう先は包囲戦が繰り広げられる新宿駅。

 この吉村がレーダー上にふらふらと移動することで相手を撹乱する、
 これが「吉村テンプテーション作戦」だ!!

   

 なお、戦略的アドバンテージは薄い。(何

  

 後半戦C 泥棒  巣鴨〜新宿駅 - 撹乱 -
 

  私は新宿へ向かいます。                               .

 少しずつ逮捕報告が届く。

 新宿へ向かう途中でミッションの開封時間となった。
 もっとも、自分は内容を事前に知っているんですけどね。

 ミッション内容は、

 「一時間後、逃亡エリアを山手線北側のみに限定する」

 という、エリア封鎖。

 移動うんぬんの手間以上に、封鎖後に警察側による包囲が楽になるという危険なミッションだ。

 新宿では地獄のような包囲戦が一段落し、アローフォーメーションの矢達は綺麗なほどに散り散りに逃げて行った。
 そして、警察も追うように徒歩圏内に移動していく。

 そんな具合だったので、自分が新宿に付いた頃には駅自体には警察の影はなかった。

 そうは言えども、駅のホームに居る人間が怖い。
 「どこかに警察がいるかもしれない」という漠然とした恐怖がここまでとは!!

 更に南下を決行する。
 ミッション的には危ないが、そのまま山手線に乗り続ければ東京駅についてミッションクリアにもなるしね。

 そんな訳で、更に山手線で移動し始めた頃、警察の不穏なツイートを見つける。

 

 「残り一時間となりました。例の作戦を開始して下さい」

  

 後半戦C 泥棒  新宿駅〜恵比寿駅 - 察知 -
 

  聞かせてもらうぞこの作戦の謎を                               .

 新宿から南には駅ごとに警察のマークが。

 ホームに着く度に、警察が乗り込んでくるんじゃないかという恐怖にかられる。

 そして、渋谷を過ぎた辺りのこと。

 
 「一番後方の車両」

 
 という内容だけのツイートが警察から。

 そして自分は一番後方の車両に乗っている。

 ……これは……危ないのではないか!?

 察知し、恵比寿駅で降り、逆方向の山手線に乗り変える。

 後々の話だが、既に同じ列車に警察は乗り込んでおり、前から順に私を探していたらしい。
 そう、吉村に対する警察の作戦は「最初は放置し、残り1時間で捕まえる」だったのだ。

 ここで乗り換えなかったら、5分後には電車内逮捕だった。

 テンプテーションとして勝手に包囲網に突っ込んでいる自分。
 気付かぬうちに、事態はハードだったりした。

  

 後半戦D 泥棒  恵比寿駅〜新宿駅 - 逃亡 -
 

  わたしは生き残るべき人だ                               .

 本格的に狙われる事を察知した。

 恵比寿やその南にいた警察は追うようにして新宿へ移動し始めている。
 自分は先に新宿に到達。早々と総武線に乗り変えに向かう。

 その乗り換えにて。

 突如、後ろから女性が。

 女性 「あの、すいません」

 吉村 「えっ!?」

 女性 「この路線は高円寺に行きますか?」

 逃げてる人間に道を聞かないで頂きたい。警察かと思って心臓止まるかと思ったよ。

 
 なお、この時自分はスーツにグラサンという、かなり声をかけにくい様相をしているのだが
 こんなイベントが発生した。

 昔、リアル桃鉄1回目の時も、ネコミミグラサンスーツ状態なのに道を聞かれた事があったが、
 どんだけ自分は善良市民オーラを出しているのだろうか……。

 
 鳴りやまぬ鼓動を抑えつつ、総武線に乗り込む。

 日は落ち、辺りは夕暮れを迎え始めていた。ゲーム時間は残り40分。逃げ切れるか。

  

 後半戦E 泥棒  お茶の水駅 - 対決 -
 

  来いよダチ公                                           .

 アロー作戦から始まり、新宿包囲網が終わり、最後は東京包囲網へと状況が変わっていた。
 じりじりと警察は西側から包囲を固め、泥棒は東側へどんどん追いやられている。

 自分も合わせるように東に逃げたが、東京駅周辺で数チームが逃亡・追跡中。

 億劫だが、お茶ノ水駅で降り、徒歩で北上する事で上野に戻る事にした。

  
 辺りはもう暗くなってきた。終わりが近い。

 マップを見れば、お茶ノ水駅に止まる警察のマーカーが3つ。

 ふらふらと歩いていけば、神田明神の標識。
 神社好きとしては拝んでおきたいという事で、ふらふらと歩いて行った。

 
 神社の風景は上の写真の通り。立派な神社だ。

 既に風が冷たく、携帯を持つ手が痛い。
 そして時間はもう、残り10分。
 マップにはお茶の水駅を出た警察のマーカー。こちらに向かっているようにしか見えない。

 さぁ、どうするか。

 このまま北に逃げ続ければ、着実に逃げ切れるだろう。
 だが、この神社の風景、参道は大変に絵になる。

 折角の最後だ。折角のイベントだ。最後はギリギリで戦ってみよう。

 よって、残り十分、この神社で乗り切る事にした。

 ここまで到達し、自分を見つければ警察の勝ち。
 到達できなければ自分の勝利だ。

 何と言っても、こんな雄大な場所なら、ちょっとラスボスっぽくてかっこいいじゃないか。

 

 という具合で、待つ。少しずつ近づいていくマーカー。時間は終了へ近付いていく。

 そして。門から現れたのは明らかに警察っぽい3人組。
 自分の横を通過し、こちらには気付いていない。

 このまま入れ替わりで神社を抜けよう。それはきっと自分の勝利だ。

 動く。

 その時、3人組の一人が振り向いた。

 「あ、社長!?」

  

 逃亡時間2時間52分。吉村麻之、逮捕。

   

 ぐふっ。 だが、悪くない最後だ。

  

 閉会式
 

  これが僕の最後の義務だ                                    .

 こうして、逃亡戦は終わった。

 冷たい風が吹く上野公園には、もう既に通る人はまばらだが、クタクタに疲れた連中がぞろぞろ集まっていく。

 寒い。疲れた。そして寒い。
 この後は飲み会だ。早く酒が飲みたい。

 という具合で、あまり閉会式については憶えていなかったりする。

 
 何はともあれ、今日の結果発表。

  チームT:生存チーム8

  チームY:生存チーム10

 アローフォーメーションという馬鹿げた作戦をした割には、結果としてチームYの生存数勝利となった。

 今思うと、あのくだらない作戦は、一応、最も警察から遠く離れることで逃亡時間を稼げていたのかもしれない。
 ……いや、そんなことはない。あの新宿包囲戦は地獄絵図だった。(何

 
 さてさて。最後のお仕事。閉会式。

 「これにて! 吉村電鉄交通社第7回目の企画、山手線全域ドロケイツアーを終了します!!
  皆様、ありがとうございました!!

 撤収!!!!」

 この”撤収”で、一気に喉が枯れました。(何)

 飲み会
 

  天の光は全て酒                                             .

 ”60人による飲み会”

 と言うものは、何と言うか、壮観だ。

 3部屋をぶちぬき、男どもがぞろぞろと並んで座っている。
 各々、疲れ切っているものの、その表情は案外にしてほころんでいた。

 酒が並んだ。乾杯の音頭は自分だ。

 「それでは、この最低の一日に! 乾杯!!」

 
 毎回毎回思うのだが、馬鹿やった後の酒は最高に、美味い。

 

 その後、生トマトを食わされたり、参加者のそれぞれと話してそれぞれのストーリーを聞いたり、
 真面目な製作話をしたり、今後のYETとか考えてみたりしていたら、あっという間に2時間が経っていて、
 自分の喉はどうしょもないくらいに枯れ切っていた。

 「今日のことは明日には忘れ、日常に戻って下さい!
 撤収!!!」

  
 こうして、追われて追いかけるだけの、酷い一日が終了した。

  

 締め

  忘れたものだあの一分一秒を                                   .

 …と、こんな具合の一日でした。
 詳細は色々抜けているかもしれないし、何と言ってもこれは当日の70分の1の物語であり、
 70倍の逃走劇がありました。

 初めてやってみた企画ではあるが、非常に楽しかった。疲れたが。
 投資額が異常に少ない(フリーパス代だけ)ってのもあり、次回の開催も簡単に検討は出来そう。

 今度やる場合はエリアを狭めて、もっと泥棒が捕まるようにした方がいいかもしれん。
 また、泥棒の目印はもっと分かりやすいほうがよかったかもしれん。などなど。

 まぁ、とりあえず。それは未来に考えます。

 参加者各位、お疲れさまでした。またどこかの馬鹿企画で会いましょう。

 
2013/03/05 吉村麻之